発明家インタビュー

ものづくりリテラシーを高めるメイカースペースを発明する

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大網拓真さん(FabLab SENDAI FLAT)

 
九州大学芸術工学部卒業。オランダのファブラボ•アムステルダムにて市民工房ファブラボと出会い、 同工房にてインターンを経験。2014年にファブラボコミュニティが運営するFab Academy卒業。 誰もがモノづくりに挑戦できる環境を目指し、FabLab SENDAI FLATに携わっている。
http://fablabsendai-flat.com/
 
宮城県仙台市にある、FabLab SENDAI FLATの大網拓真さん。FabLabアムステルダムのインターンシップの経験を活かし、日本のメイカースペース、デジタルファブリケーションの未来を、ラボの運営を通して“発明”しています。
 
- 大網さんの現在の活動について教えてください。
FabLab SENDAI FLAT(以降「ラボ」)の運営に携わりながら、外部のメイカースペースの講師をやったり、デザインや展示の業務を請け負ったりしています。
ラボでは、スタッフ自らも何かをつくってネタをためつつ、機材の貸し出し、デザイン業務、展示の設計・デザインなどの仕事を行っています。
ラボについて「ただ安く機材が使える場所ではなく、あそこに行ったらおもしろいことやってるんじゃないか、と感じてもらえるような場所にしたい」という思いがあって。単なる「マシンを使える場所」から「なんだか面白そうな場所」へ、ということを意識して運営しています。
利用者の方から依頼される業務は、試作・開発が多いです。ラボ自体ではたくさんの数は作れないけど、量をつくるとなったときには、仙台の工場の知り合いにつないでいます。工場の現場の人でも、ラボでプロトタイプをつくって上に提案できるのがいい、と利用される方もいます。誰かにアイデアを提案するための交渉材料をつくるための場になりつつあります。モノがあると、話が早いんですよね。
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FabLab SENDAI FLATの様子

 
- 「スタッフも作品をつくりながら…」とありましたが、どんな“発明”に取り組まれているのでしょうか。
ラボのスタッフは僕を含め2名で、「伝統工芸や伝統的な素材からものづくりの未来を考える」ということをメインプロジェクトとして行っています。
扱う伝統的な素材の1つが、漆(うるし)です。漆と聞くと、自分に扱えるのかとか、弟子入りしなきゃいけないんじゃないかとか、すごくハードルが高いように感じるんですけど、実は通販でも買えるんですよね。1万円くらいで必要なキットを揃えられます。素材は使われないとなくなっていってしまうので、実は漆ってこういうもので、簡単に使うことができるんだよ、ということをアピールするために一般の人が参加型で取り組めるプログラムを考えて、提供しています。
たとえば、漆のランプシェードづくりです。ワークショップ形式で行い、一度も漆に触ったことのない人が参加してつくってくれました。まず作りたい形を3Dモデリングして、それを内側で支える骨組みとなるアクリルをレーザーカッターで切り出し、ワッフル構造で土台をつくります。その上に布を貼り、漆を重ねていくと、固まってランプシェードとして使うことができます。最後の塗り重ねていくところは手作業なんですけど、人間の手で感覚的に削った土台からつくるんじゃなくて、最初から狙った形を正確につくるためにソフトウェアや機材を使うという取り組みです。
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乾漆ランプシェードワークショップ

 
- 素材や仕上げにこだわって取り組むのは、どうしてですか。
メイカースペースから生まれたモノの“made in FabLab”感が嫌だな、という僕の問題意識があって。3Dプリンターの積層感とか、レーザーカッターで使いやすいアクリル、MDFとか、使っている素材や仕上がりで「あぁ、メイカースペースでつくったんだな」ということが分かっちゃうんですよね。「マテリアル×マシン=できるもの∞」。素材が変われば、できあがるモノも爆発的に変わっていくのに、と思っていました。
先端技術がどんなに発展しても、一般の人におりてくるのは何十年も後で、それまでは限られた人にしか使えないですよね。僕は、技術そのものに興味があるけど、限られた高価な機材や、特別な技術を持つ人しか再現できないものより、みんなが挑戦できる技術、手の届きやすいところにあるテクノロジーに興味があって。そういう視点で考えると、伝統工芸は古くから一般の人の生活に根付いて使われていたものなので、応用しやすい、シェアしやすいと思い、注目しています。
 
- どのような経緯で現在の活動に至ったのでしょうか。
元々、僕は高専でプログラムを学んでいました。でも、卒業後の進路を考えたときに「プログラムだけやっていても、画面の中から抜け出せないんじゃないか。効率化を追求することだけではなくて、もうちょっとダイレクトに、自分がつくったモノで人が喜ぶところを見たい」と思って。高専卒業後の2012年4月、九州大学芸術工学部に入学し、ソフトウェアやプログラムの見た目を設計する術を学びました。
在学中に作ったものとしては、「FLASH DJ」という作品があります。使い捨てカメラのフラッシュを押すとき、その近くにAMラジオを置くとすごい音がするということを見つけて。それをPCからコントロールできるようにして音を出して、友人と遊んでいました。この頃は、ディスプレイの中だけで終わるんじゃなくて、人とダイレクトに関われる、空間とかモノとかに転用できないかなぁ、ということを考えていましたね。
大学生の終わり、2013年のはじめに、オランダへ留学する機会があって。前期は学校へ通い、後期はFabLabアムステルダムのインターンに参加しました。日本のFabLabは学術的な雰囲気が強い印象がありますが、アムステルダムの所長はかなりクレイジーでハッピーな人で(笑)。出入りする人も、アーティストやデザイナーが多く、実験的な取り組みがたくさん行われていました。
「インターン生は3か月間で何かをつくる」という課題があり、僕は「Toaster Printer」という作品をつくりました。パンに8×8ピクセルの焼き目をつけられるトースターで、PCでどういうパターンを焼き付けるのかを描いて、それをトースターに送信すると模様通りに焼いてくれるという作品です。
FabLabアムステルダムの雰囲気がすごく好きだったので、日本に帰ってきてからもそういう仕事がしたいと思っていたところ、縁あって現在のFabLabSENDAIで働くことになりました。

 
FLASH DJ

 
Toaster Printer

 
- 大網さんがこれまでで最も影響を受けた“発明”について教えてください。
やっぱり、FabLabアムステルダムでの経験ですね。そこが、一番の原点だと思います。プロ・アマ問わず、分野も問わず、同じテーブルで一緒にモノをつくっているということが、すごいなぁ、と。最近になって、よりそう思います。昔のメイカースペースは「何でもつくれる、いろんな人が来れる」という場所だったけど、近年は、メイカースペースごとに分野がだんだん特化されてきています。その結果、専門的にできることは増えるのかもしれませんが、特化したがために生まれなくなった交流とか、分野間の関わりというのがあるよな、と感じていて。どっちがいいのかは一概には言えないですけど、僕はいろんな人々の接点になるような場所のほうがおもしろくて、それが今のラボ運営の方向性になっていますね。
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FabLabアムステルダムの様子

 
- これからどんな“発明”に挑戦したいですか。
みんながつくる社会になる必要はないけど、つくられ方は知っておくべきだよね、と思っていて。つくることで仕組みを知っていれば、たとえば100均のような大量生産の商品を見た時に、これはこうつくられているから安くできてるんだ、という思考につながりますよね。コップを買う時に、100円のモノを買うのか、作家さんがつくった1000円のモノを買うのか、そうやって思考できることって健康だな、と思うんです。FabLab SENDAI FLATは、そんなふうに「ものづくりリテラシー」を上げる場所を目指しています。昔は、縁側で職人さんが畳を貼っていたり、刃物を研いだりしていて、子どもたちは学校の帰りにそれを見ることができる環境があったそうなんですけど、今はほとんど見られないですよね。そういう、つくっている人がそこに居ることができるし、それを誰でも見ることができる場所にしていきたいな、と思っています。
 
- 最後に、さかわ発明ラボへメッセージをお願いします。
原材料の入手先が近くにあることで、素材から見えるラボになる可能性があるのかな、と。僕もなんだかんだ言いつつも、素材は通販とかで買ったりしてるんですよ。安いし早いからいいけど、素材すらも「これって誰がつくってるんだろう」ってだんだんモヤモヤしてきて。その点、さかわ発明ラボは、木材を切り出してくる人と話せる、農家さんの顔が見える、というのがあるので、すごくおもしろいラボになっていくんじゃないかなぁ、と思います。遊びに行きたいです。
 
(取材日:2016年9月16日)

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