発明家インタビュー

建築や家具で木の新しい使い方を発明する

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山田敏博さん(株式会社HUG代表取締役/NPO法人team Timberize理事)

 
1973年福井県生まれ。建築家、プロダクトデザイナー。関西大学工学部建築学科卒業後、株式会社山本理顕設計工場勤務。その後、HUGを設立し、建築や家具の設計デザインを中心に活動中。一方、NPO法人 team Timberizeでは、木の新しい可能性を探るため、木や木造建築の研究開発、展覧会やシンポジウムなどの普及活動も行っている。
http://hughug.net/
 
山田さんは、木という素材の可能性に注目して、建築家、プロダクトデザイナーとして新しい木の使い方を生み出しながら、NPO法人team Timberizeの一員として、社会への木材活用の普及活動も行っています。「さかわ発明ラボ」のある佐川町は、自伐型林業の推進に力を入れている町。木を通して縁がつながった山田さんの“発明”についてお話を聞きました。
 
- 山田さんは木を使った建築や家具のデザインを中心にご活躍されています。そんな山田さんの活動の軸となっている“発明”を教えてください。
建築や家具というフィールドで、木の新たな活用方法や価値を“発明”していくことです。
特に国産木材の新しい活用の仕方を探っています。たとえば、東京大学腰原研究室、株式会社大林組と開発した「エコサイトハウス」という木造仮設システムでは、これまで用途が少なかった75角以下の径の小さい木を使っています。まだまだ利用率の低い間伐材を建築の構造材として使えるように接合金物などを工夫したシステムです。こういった新しい活用を促進していくことで森林保全にも貢献していきたいと考えています。
また、株式会社イトーキと開発した「saltus(サルタス)」という組立式の木質内装システムでは、既存の内装に手を加えることなく、素早く組立・設置をして、オフィスなどの屋内に木質空間をつくりだすことができます。これまでオフィスという空間では、自然素材である木はほとんど使われてきませんでした。オフィスに木を使うことで、オフィスにも木にも新しい価値が生み出されるのではないかと思っています。
そして、秋田県立大学の足立幸司さん、株式会社イトーキと開発した「CURVIS(クルビス)」という椅子では、木という素材の楽しさをデザインしました。これは木で出来たバネの椅子です。ぐにゃぐにゃとやわらかくて、バランスボールのような不思議な座り心地です。大人にも子供にも人気があるんですよ。すごく楽しい座り心地なので、機会があれば是非座ってみてください。
こういったプロジェクトを通じて、木が活躍できる場所を増やしていって、木の存在をもっと身近なものにしていければと思っています。
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* エコサイトハウス(photo / Satoshi Asakawa)

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* saltus(サルタス)(photo / Satoshi Asakawa)

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- 山田さんが理事を務めるNPO法人 team Timberizeでは、木造建築に特化した活動をされていますね。
team Timberizeは、木を新しい材料としてとらえ、木や木造建築の新しい可能性を探っていくNPO法人で、木造建築の研究開発、展覧会などを行い、木の普及活動に取り組んでいます。
7年前くらいから、東京、大阪、広島などさまざまな地域で、「都市木造」によってどのような未来の都市がつくっていけるかということをテーマに展覧会を行ってきました。その中の一つ「表参道7プロジェクト」は、表参道を舞台に木という素材をいかし、木造建築の可能性を広げる建築を提案したプロジェクトです。
現在、都市の大規模な建築は鉄やコンクリートで作られていますが、建築基準法が改正され、技術的にも地震や火災に強い大規模な木造建築がつくれるようになってきています。都市に新しい技術によって建てられた大きな木造建築があったらどんな街になるのかを仮想し、社会に問いかけたプロジェクトです。
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* 表参道7プロジェクト「30」。写真ではなくCGだそう!

 
- 山田さんにとって、木はどのような魅力をもった素材なのでしょうか。
もともと、木が特別好きだったという訳ではないんです。素材としての木に注目した、という感じです。そのきっかけの一つは、2000年の建築基準法改正で木造でも大規模な建築ができるようになったことです。「木なら、これまでにない新しいことができそうだ」と思いました。実際に研究していくと、素材としての面白さがたくさん見えてきました。
木は、日本人にとってはなじみ深い素材です。昔からずっと大切に育てて使ってきましたが、近代化の波の中で、この70~80年の間は使われることが少なくなり、鉄やコンクリート、プラスチックなどの素材に置き換えられていきました。それらの素材でつくられた街は、均一化され、どこでも同じように見えます。ただ昔に戻るのではなく、現代に合った建築で、その地域らしい街並みを取り戻したいんです。そこに、木の面白さ、可能性を感じています。
また、木は自分で切ったり、削ったりと、誰もが扱いやすい素材でもあります。気軽に加工できることで人と結びつきやすい。木を介して、人と人を結びつけることもできるのではないか、という想いもあります。
 
- これから、どのような“発明”に挑戦していきたいですか。
展覧会などの普及活動を通して、木への期待が高まってきていると感じています。木が注目され、少しずつ理解されるようになってきて、今、やっとスタートラインに立ったような想いです。
最新の技術を使った新しい木の使い方が、文化として定着していくことを目指したいと思っています。木が当たり前のように使われ、日常になじんでいる、そんな社会になったら素敵なんじゃないかと思っています。途絶えかけていた木の文化を、改めて新しい文化として根づかせていきたいですね。
 
- あなたの価値観を変えた“発明”について教えてください。
team Timberizeの仲間と出会い、NPOを立ち上げたことは価値観を変える出来事でした。社会に対するヴィジョンを共有する仲間と一緒に活動することで、大きなパワーを生み出すことができ、より社会にコミットすることができる。仲間を広げていくことの大切さに改めて気づかせてくれたのが、team Timberizeでの活動ですね。これからも、いろんな仲間と出会っていきたいなと思っています。
 
- 最後に、“さかわ発明ラボ”へのメッセージをお願いします。
「つくる人」と「使う人」がつながりながら、ものづくりをしていっていただきたいと思います。いまの社会では「つくる人」と「使う人」が離れてしまったと感じています。どこで誰がつくったかわからないものを買うことが当たり前になってしまい、つながっていない。誰がどんな想いでつくったのかというメッセージが伝わらない。そんな状況は、どちらにとっても不幸なことだと思うのです。
つくった人の想いを知れば大切に使いたいと思いますし、大切に使ってもらえればつくる喜びになり、それがものづくりの原動力になっていくと思います。
「つくる人」と「使う人」が近くにいて、つながっていて、時には一緒につくってという環境を、この「さかわ発明ラボ」は生み出すことができると思います。「つくる人」と「使う人」をつなげていく仕組みを、いろいろな方法で試してほしいと思っています。


(取材日:2016年6月5日)

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