発明家インタビュー

まちの人が幸せに暮らせる社会の仕組みを発明する

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堀見和道 町長(高知県佐川町長)

1968 年高知県佐川町生まれ。東京大学を卒業後、新日本製鐵株式会社ほかを経て、2000 年に株式会社堀見総合研究所設立。2013 年佐川町にUターンし町長に就任。
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記念すべき最初の発明家は、「さかわ発明ラボ」仕掛け人の一人、高知県佐川町・堀見和道町長です。2013 年の町長就任以降、町民が幸せに暮らせる社会を実現するため、町民や役場職員はもちろん、外部の専門家とも連携しながら、新しいまちづくりの仕組みを“発明”しています。

 

- 2013 年の就任以降、町長として多くの施策に取り組まれてきたことと思います。その中で特に、町民の幸せにつながる“発明”を形にすることができた、と感じるものを教えてください。

この先 10 年間のまちづくりの指針となる総合計画を住民・役場職員一丸となって「みんなで」つくったことです。総合計画とは、10 年に一度策定する町の未来像とその実現のための行動計画のこと。課題が山積している佐川町では、住民同士が手を取り合い、自分事としてみんなでまちづくりに参加しなければ、明るい未来を実現できない。「明るい未来を描けるような総合計画を、住民と一丸となって作り上げたい」、その想いから、2014 年度より「みんなでつくる総合計画」プロジェクトをスタートさせました。
始めるにあたってさまざまな書籍を読む中で、『ソーシャルデザイン実践ガイド』に出会いました。デザインの力で課題を解決していく、という考え方に感銘を受け、著者であるissue+design 代表・筧 氏のもとを訪ねるところからスタートしました。

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みんなでつくる総合計画 高知県佐川町流ソーシャルデザイン』(著:チーム佐川/監修:筧裕介)学芸出版社

- 堀見町長が、社会課題を解決したり、人の生活を豊かにした、偉大な“発明”だと思うものを教えてください。

阪神・淡路大震災で力を発揮した地震の揺れを吸収して建物の揺れを抑える「免震装置」は偉大な発明だと思います。建築の仕事をしていた頃、新日本製鐵株式会社(現新日鐵住金株式会社)とブリヂストンが共同で開発していた免震装置が、兵庫県にある施設に導入されることになって、今工事をしているよ、という話を聞いていたんです。免震装置が設置されて、もう少しで建物が完成するという頃に阪神淡路大震災が起きました。まだ完成はしていなかったんですが、建物の被害はほとんど出ませんでした。やっぱり免震装置は効果があるんだな、技術の進歩はすごいなぁと思いました。技術によって、人の暮らしが守られる。すごいことですよね。

- 未来の佐川町のために、これから挑戦したい“発明”について教えてください。

今、力を入れて取り組んでいることの1つが、自伐型林業* の推進と、切り出してきた木材を中心とした地域資源を活用したものづくり事業です。
日本の国土の7割、高知県の8割は山林が占めています。先人たちが植えてくれた人工林を切り出し、活かし、所得に変え、佐川町のような中山間地域に仕事を生み出すことに挑戦しています。今(安価な輸入木材の流通などによって)日本の林業は危機的状況が続いています。新しい人工林活用の方法を、佐川の山から生み出していこう、日本全体の課題を、この小さなまち・佐川町から解決していこう、と思っています。
この4月には、最新の技術とデザインで新しいものづくりに挑む「さかわ発明ラボ」がオープンしました。山から切り出された木材だけでなく、農作物や植物など佐川の地域資源とデジタルファブリケーションを活用して、地域課題を解決する、生活を豊かにするためのものづくりの拠点にしていきたいと思っています。
* 大きな機械を使う森林整備ではなく、個人レベルで行う自営型の林業形態のこと。機械投資などの初期費用が小さくてすむため参入しやすく、雇用を生みやすい。森をこまめに管理していくため、継続的に収益を得ることができ、環境保全の面でも評価されている。

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(写真提供:(一社)農林水産業みらい基金)

- 最後に、さかわ発明ラボに期待することを教えてください。

「こういうものまで自分で作ることができるんだ」「買うだけではなくて、必要なものを自分で作ることができる世の中がきたんだ」ということを、町のみんなが実感していって、町民一人ひとりの可能性が広がっていってほしいと思っています。
その中から、これからの時代のものづくり、“発明”で、将来世界に羽ばたくような若者が出てきてくれると嬉しいです。人間性もすばらしく、いろいろな発明・ものづくりをしている人が「ぼく、佐川町出身です」「私、小さい時に佐川町のこういう環境があったから、今の自分があるんです」と、世界に向けて発信してくれる、そんな人が一人でも育ってくれることを楽しみにしています。
興味を持ってくれる人、意志を持って関わってくれる人が、一人でも増えてほしいなぁと思っています。

(取材日:2016年6月3日)

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